サンベル法律事務所は、全国からご依頼を頂き、指導監査の対応業務をしています。
ここでは、介護サービス事業者への実地指導についてご説明します。
介護行政指導(集団指導、実地指導)の概要
1 指導の対象
行政による指導の対象は、以下の介護サービス事業者です。
1 指定介護老人福祉施設開設者
介護老人保健施設開設者
平成18年旧介護保険法第48条第1項第3号の指定介護療養型医療施設開設者
介護医療院開設者
2 指定居宅サービス事業者
3 指定居宅介護支援事業者
4 指定介護予防サービス事業者
5 指定介護機関
2 指導の目的、方針
行政による介護サービス事業者への指導は、介護給付の対象サービスの内容や介護報酬の請求、また、設備や運営に関する基準について、法令、通達への適合状況などを明らかにし、利用者の自立支援や尊厳の保持を念頭において、介護サービス事業者への支援を基本に、施設の適正な運営、介護給付の対象サービスの質の確保や保険給付の適正化を図ることを目的として実施されるものです。
以上の目的に基づき、介護の指導では、介護給付の対象サービスの取扱いや介護報酬の請求などに関する事項について周知徹底するとともに、指導検査基準に照らし改善の必要があると認められる事項について、適切な助言や指導を行うことが方針とされています。
3 指導の種類
1 集団指導
指導の対象となる介護サービス事業者を、必要な指導の内容に応じ、一定の場所に集めて講習などの方式により実施されます。
2 実地指導
指導の対象となる介護サービス事業者等の事業所において実地に実施されます。
@ 一般指導
単独で実地指導が実施されます。
A 合同指導
厚生労働省と合同で実地指導が実施されます。
4 指導対象の選定基準
指導は全ての介護サービス事業者の中から、重点的かつ効率的な指導を行う観点から、毎年度作成する実施計画において、事業種別毎の状況に応じて選定されます。
1 集団指導の対象の選定基準
集団指導の対象は、施設の運営、介護給付対象サービスの取扱い、介護報酬請求の内容、制度改正の内容及び過去の指導事例等に基づく指導内容などに応じて選定されます。
2 実地指導の対象の選定基準
@ 一般指導
ア 一般指導の対象は、毎年度、国の示す指導重点事項等に基づき選定されます。
イ 業務管理体制の整備に関して必要があると認められる介護サービス事業者等が選定されます。
ウ その他、特に一般指導を要すると認められる介護サービス事業者等が選定されます。
A 合同指導
合同指導の対象は、一般指導の対象とした介護サービス事業者の中から選定されます。
5 指導の実施態様
1 集団指導の実施態様
@ 指導通知
指導対象となる介護サービス事業者が決定されたときは、あらかじめ集団指導の実施日時、場所、出席者、指導内容などが文書で当該介護サービス事業者に通知されます。
A 指導方法
集団指導は、施設の運営、介護給付対象サービスの取扱い、介護報酬請求の内容、制度改正内容及び過去の指導事例等について講習などの方式で行われます。集団指導に欠席した介護サービス事業者には、当日使用した書類が送付されるなどの情報提供がなされる場合があります。
2 実地指導の実施態様
@ 指導通知
指導対象となる介護サービス事業者が決定されたときは、あらかじめ実地指導の根拠規定及び目的、実地指導の実施日時、場所、指導担当者、出席者、準備すべき書類などが文書で当該介護サービス事業者に通知されます。ただし、検査開始時に文書が交付されることもあります。
なお、
指導の実施に当たって、介護サービス事業者は指導に必要となる書類(調査書) などの提出を求められることがあります。
A 指導方法
実地指導は、指導検査基準及び介護保険施設等実地指導マニュアル(平成22年3月31日付老指発0331第1号厚生労働省老健局総務課介護保険指導室長通知)等に基づき、関係者から関係書類等を基に説明を求める面談方式で行われます。業務管理体制の整備・運用状況の確認等にあたっては、「介護サービス事業者に係る業務管理体制の監督について」(平成21年3月30日老発第0330077号厚生労働省老健局長通知)を踏まえ実施されます。なお、実施方法については、業務管理体制の整備・運用状況を適切に確認できる方法で、実地検査に限らず書面検査により実施されることもあります。
B 指導結果の通知等
実地指導の結果については、改善を要すると認められた事項及び介護報酬について過誤による調整を要すると認められた事項を含め、後日文書によって通知がなされます。
C 改善状況報告書の提出
当該介護サービス事業者等に対して文書で改善が指摘される場合は、改善期日を記載した指導結果通知書が送付され、改善状況報告書の提出を求められることがあります。なお、改善状況報告書の提出期限については、指導結果通知書発送日から30日以内であるなどします。
D 指導体制
実地指導は、2名以上の指導班で実施されることが通例です。
6 監査への移行
実地指導中に以下に該当する状況が確認された場合は、実地指導が中止され、監査に移行することがあります。
なお、介護サービス事業者への監査については、
介護事業所への監査のコラムをご覧ください。
1 著しい運営基準違反が確認され、利用者及び入所者等の生命又は身体の安全に危害を及ぼすおそれがあると判断された場合。
2 報酬請求に誤りが確認され、その内容が著しく不正な請求と認められる場合。
介護事業所への実地指導の対応法
実地指導(介護)の対策のポイント
実地指導それ自体は、あくまで指導であり、介護事業所に直接の不利益を課すものではありません。しかし、
指導での対応などにより、監査、そして介護関係の許可の取消しなどの行政処分に繋がり得ることから、実地指導に対しては、適切に対応する必要があります。すなわち、実地指導への対応の失敗は、その介護事業所の経営を揺るがし得ることから、実地指導には、十分な対策、準備が求められるというべきです。
実地指導への対策のポイントは、ありきたりですが、実地指導の仕組みを理解し、専門家に相談しつつ、事前準備をきちんと行う、ということです。
また、手前味噌ですが、実地指導の当日に弁護士を同席させることも、担当者の質問が慎重になるなど、良い効果が期待できると考えています。
監査になってしまうと、従業員の士気にも大きな影響が及びますので、監査になることのないよう、軽く考えることなく、できる限りの対応を行い、実地指導に臨まれることをお勧めします。
介護事業所への指導の実施状況
介護サービス種類別の指導の統計
厚生労働省公表の
全国介護保険・高齢者保健福祉担当課長会議資料によれば、平成29年度の指導の実施件数などは以下のとおりです。
1 指定居宅サービス
指定訪問介護事業所
5922件
指定訪問入浴介護事業所
287件
指定訪問看護事業所
1549件
指定訪問リハビリテーション介護事業所
270件
指定居宅療養管理指導事業所
153件
指定通所介護事業所
4342件
指定通所リハビリテーション事業所
1016件
指定短期入所生活介護事業所
2936件
指定短期入所療養介護事業所
1138件
指定特定施設入居者生活介護事業所
1194件
指定福祉用具貸与事業所
1116件
指定特定福祉用具販売事業所
1102件
指定居宅介護支援事業所
7137件
2 介護保険施設サービス
指定介護老人福祉施設
2851件
介護老人保健施設
1345件
指定介護療養型医療施設
208件
3 指定介護予防サービス
指定介護予防訪問介護事業所
5350件
指定介護予防訪問入浴介護事業所
270件
指定介護予防訪問看護事業所
1512件
指定介護予防訪問リハビリテーション事業所
259件
指定介護予防居宅療養管理指導事業所
155件
指定介護予防通所介護事業所
4964件
指定介護予防通所リハビリテーション事業所
959件
指定介護予防短期入所生活介護事業所
2571件
指定介護予防短期入所療養介護事業所
1070件
指定介護予防特定施設入居者生活介護事業所
1022件
指定介護予防福祉用具貸与事業所
1094件
指定特定介護予防福祉用具販売事業所
1082件
指定介護予防支援事業所
498件
4 指定地域密着型サービス
定期巡回・随時対応型訪問介護看護事業所
175件
指定夜間対応型訪問介護事業所
26件
指定認知症対応型通所介護事業所
681件
指定小規模多機能型居宅介護事業者
1180件
指定認知症対応型共同生活介護事業所
2923件
指定地域密着型特定施設入居者生活介護事業所
83件
指定地域密着型介護老人福祉施設入所者生活介護事業所
613件
看護小規模多機能型居宅介護事業所
111件
指定地域密着型通所介護事業所
3633件
5 指定地域密着型介護予防サービス
指定介護予防認知症対応型通所介護事業所
631件
指定介護予防小規模多機能型居宅介護事業所
995件
指定介護予防認知症対応型共同生活介護事業所
2632件
6 合計
指導実施事業所数
67055件
うち無催告によるもの
496件
うち改善報告を求めた事業所数
33076件
うち過誤調整を指示した事業所数
5305件
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介護の実地指導・監査のコラム
介護の指導監査のコラムの一覧です。
実地指導(介護事業所)の際に、また日常の運営にご活用下さい。
実地指導、監査の対応法
1
介護の実地指導への対応法
2
介護の監査への対応法